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坂口尚、『石の花』②-自由の重荷と平等の仮面-

大佐の話に納得のいかないイヴァン。マイスナー大佐さらに続けて
以下のようなことを話します。(石の花5巻 解放編)


人は抽象的平和論より 現実に足りないものを補う力を求めるし、
人も自由を受け入れるより 支配されることを本当は好んでいる。
不安と混乱の世の中で、自由に生きるのは無理だろう。
絶え間なく突きつけられる問いに、何が善で何が悪かを自由な心で
選ぶことは普通の人には重荷だ。世の中は複雑で、
さまざまな思想、宗教、神がそれぞれの正しさを掲げている。
それを一つ一つ自分が自由な心で選ぶというのは相当エネルギーがいる。

だから、そんな自由は、いっそ人に預けてしまった方が楽ではないか。
国家、宗教、伝統、慣習。
自分で問い、悩み、選ぶ自由より権威に従ってしまったほうが楽だ。
そうすれば、どこまでが他人の所為でどこからが自分のものなのかも
わからなくなる。その方が自分を責めずに済むし
人は心安らかに暮らせるのではないか


人は自由が重い。楽な生き方とは、何かに従属して生きること。
そして事実、人はどこかでそれを望んでいる。
もし自分の考えを出して、集団から逃げて仲間を見つけたとしても
実はそこにいる仲間も自分と同じ、
消化不良を抱えた人ばかりで鏡を見ているようにしかならない。
やがて集団の中に自分を消す方がらくだと気がつく。そう語ります。
だから、統制やルールを敷くために自分は奮闘しているのだと。
力によって秩序ある大きな流れを作る必要があるんだと。

イヴァンは彼の説明を否定する言葉を出ません。
それはスパイとして奮闘したイヴァンが見て、
くじけそうになった現実そのものだったからです。

この物語では、もう一人、ナチスの収容所で、
大佐と違いこそあれ共通点をもって平等を語る人が出ます。
ここが坂口作品のすごいところです。

彼女の名前はラーナ。
生まれつき顔にアザがあり、収容所で強制労働をしている人物です。
以下のような内容のセリフをいう場面があります。(石の花5巻解放編より)


シャバは自分を見るどころか隠そうとする連中ばかりで、
宝石、地位、お金で飾りつけて自分が他人より秀でているか
見せびらかしたがっている。そんな連中が
アザをみて同情するのは 自分がほっとするから。
「自分より劣った人間」と思って安心するだけ。
収容所にほおり込まれてから やっとみんな対等になれたんじゃないか。
人を蹴落とし押し合いへし合いしていたのに、それが平和だったといえるの?
"仲良く平和を〝と口に出しているわりには普段はどうだったの?
あんな平和なら二度と望まない


ラーナは顔にアザがあったことで日常の中の人の差別意識や
誇張などを感じ取っていました。そしてこのことが一見平和に見える中、
平等や対等という意識を崩すものとして存在していたといいます。
一見平和に見えていたのに、その事実は皮をはずせば不平等の塊じゃないか。

くさつきは彼らのいっている平和や平等を完全に否定できない
自分の中の何かを感じます。
何度読んでも心に何かが刺さるのです。ドイツやナチスの特殊性じゃない。
マイスナー大佐がいう事実とは、私たちの心にもあるリアルです。
集団の中に埋没する方が、楽。他人と自分を比べて安心する生き方。
この私たちのもつ感情が戦争になったとき、一番恐ろしいのではないでしょうか。

大佐とラーナに語りかけられている気がします。

「従属することを望み、普段から国家の決定にかかわる権利を持ちながら、
関心を持たず、世界平和を唱えながら、自分のできることすら考えない。
でもその方が楽なんだろう?自由だ民主だと口ではいいながら
「戦争」や「平和」の言葉だけに反応しているんじゃないのか?」


「平等の陰に隠れている人の差別、自分自身の満足、自己嫌悪。そんなものに
振り回されて、見えない不平等をつくっているのは自分もそうじゃないのか?」


戦争をつくる要素はあなたの日常に潜んでなかったのか?
くさつきには、そう聞こえるんです。

この鋭い、そして本質的なリアルにイヴァンと
家族とはぐれパルチザン少年兵となった弟クリロが
答えを発信しようと物語はラストへ向かいます。

すぅすぅ…
DSCN0881.jpg
あ、ねぇ!ちょっと聞いてる?!
人が久しぶりにマジメになってるのに…

というわけで、長くなったので続きはまた。

※著作権の関係上、大佐やラーナのセリフは載せることができません。
本物はもっと臨場感があってすばらしいです。ぜひ、実物をごらんください。



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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

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プロフィール

草月 愛弓

Author:草月 愛弓
草月愛弓(くさつきあゆみ)
Age:30
北海道江別市在住
職業:ライター(他にもいろいろ)
趣味:本、絵、まちあるき

基本は仕事大好き人間です。叱らずのびのび、育ててやってください。温厚に見えますが、仮面の下ぶちぎれ組。

※カテゴリに①②と数字のついているものは北海道探検を
している記事になります。 

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